別名“白鷺城”と呼ばれる播州姫路城の天守には、伝説の金の眼の獅子頭とその不思議な力で生きる魔性の女たちが住んでいた秋のある日、天守の主人・富姫は下界の者たちの鷹狩りのあまりの騒々しさに辟易し、夜叉ケ池の白雪姫に嵐を依頼する。突然の豪雨に流される人間たちを見て、富姫はしゃぎ楽しむのだった。そんな彼女のところへ、猪苗代に住む妹・亀姫が舌長姥と朱の盤坊を伴ってやって来る。亀姫が土産に持参した猪苗代の城主の首を見ながら、話に花を咲かせる富姫たち。さらに彼女たちは手毬遊びに興じ、一時を過ごすのだった。亀姫の帰り際、富姫は城へ戻る鷹狩りの一行から霊力を使って獲物の鷹を奪い取り、妹に土産として持たせてやる。ところがその晩、100年の間、誰も近寄ったことのない天守に一人の若侍が上がって来た。彼は鷹匠の図書之助といい、城主・播磨守の命令で逃げられた鷹を探しに来たのだった。そこで富姫に会った図書之助は、彼女の姿を見ても臆せず涼やかな態度を保ったことから、本来なら生きて帰れぬところを無事生還する。だが、途中で明かりを失った図書之助は、再び天守へ戻らざるを得なくなった。今度ばかりは命を奪おうと思う富姫だったが、図書之助の話を聞くうち、人間界の理不尽さに同情する。やがてそれは恋へと転じ、富姫は彼を帰したくなくなってしまった。図書之助は富姫に惹かれつつも、城主の命令に背くことは出来ないと下へ戻ることを懇願した。富姫は今回もそれを許し、さらに天守に上った証拠として武田ゆかりの兜を持たせてやるのだった。ところが、それが原因で図書之助は窃盗の容疑をかけられてしまい、あまりの理不尽さに城主への忠誠心もなくなった図書之助は、同じ命を落とすなら富姫によって殺されたいと三たび天守へ参じるのだった。だが、そんな彼を富姫は獅子頭の母衣の中へ匿う。やがて、図書之助を追って、追っ手の者たちが天守へ上がって来た。そこで富姫は獅子頭を暴れさせ彼らを退散させようと試みるが、その際に獅子の眼を傷つけられてしまう。同時に富姫も図書之助も視力を失うことになり、もはやこれまでかと二人が死を覚悟した時、獅子頭を彫った老工・近江之丞桃六が突如として現れ、獅子の眼を彫り直すのであった。獅子の眼が直ると二人の視力も回復した。桃六に救われた富姫と図書之助は永遠の愛を誓い、いつまでも抱き合うのであった。